【書評】ケン・リュウ『紙の動物園』(ハヤカワ文庫SF)

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書評

ケン・リュウはプログラマー、そして弁護士という異色の経歴(マイクロソフトに勤務していたこともある)を持つ新進気鋭のSF作家だ。経歴だけ見ると「天才」としか言いようがないのだが、小説家としての活動が注目されはじめたのは比較的最近らしい。日本国内では又吉直樹が紹介したことで注目を集めたようだが、最近では日本経済新聞や雑誌『Pen』でもインタビューが掲載されていたりするので、SFファンでなくても名前を目にした人は多いはずだ。リュウ・ケンではない。ハドゥケン

表題作『紙の動物園』は、ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞の3つのアワードを同時に受賞した史上初の作品である。とはいえ、ヒューゴー賞とネビュラ賞の同時受賞はそうめずらしいことではないので、世界幻想文学大賞も同時に受賞したというところに、この作品(と作家)の魅力があると私は思う。じっさい『紙の動物園』に関していえばサイエンスの要素はほとんどなく、ほぼファンタジー小説だ。

文章のスタイルはいわゆる「マジック・リアリズム」。ひとことでいえば、ありえないことを本当のように見せる、手品のような文章である。SFというと、リアルさを出すためか、作者が科学的な設定を怒涛のように畳みかけてきて、それを読者が脳内で再構成しなければならない作品が多々ある(これはこれで人気がある)が、本書に収録されている作品では説明は最小限である(例外として『結縄』には少々込み入った設定がある)。

というわけで、本書はSFというよりファンタジー色がつよい短編集となっている。もちろんSF色がまったくないわけではない。「ファンタジー小説は読むけど、SFはなんとなくニガテで、敬遠気味だ」という人におススメしたい。

ちなみに、本書はケン・リュウの日本オリジナル作品集『紙の動物園』(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)、ソフトカバー)を文庫化したもの。もともとの本が413Pとボリュームがあり、二分冊(『紙の動物園』『もののあはれ』)で刊行された、そのうちの一冊目である。二冊目の『もののあはれ』はSF色が強めとなっているらしいので、SFが読みたい人はこちらも合わせて買うといいかもしれない。

……とここまで書いておいて言うのもアレだが、2017年11月20日まで、Amazonで早川書房海外SFセールが実施されており、Kindle版がなんと664円で買えるので、本書と『もののあはれ』を別々に買うよりは、Kindle版を買ったほうが断然おトクなので今買うならそちらを買ってください……ちなみに筆者は映画『ブレードランナー2049』の公開直前に『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』のKindle版も定価で購入している。どうしてこうなった

【評価】
★★★★★

【こんな人にオススメ】
・SFはあまり読まないが興味はあるという人
・南米系作家(ボルヘス、ガルシア=マルケス)が好きな人
・ファンタジー小説が好きな人

【わたしのホンネ】
・Kindle版買っとけばよかった……