【オススメ本】スティーヴ・フィーヴァー

スティーヴ・フィーヴァー ポストヒューマンSF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

豪華SF作家たちによるアンソロジー。「ポストヒューマンSF」というのは耳慣れない言葉だが、もちろん作品内に人間が出てこないわけではない。これは、テクノロジーが超発達し、人々の生活、価値観、社会が大きく変貌したあとの世界を描いたSF小説……と思い浮かべればわかりやすい。

本書の編者あとがきによれば、

「テクノロジーによって変容した人類の姿、そしてそれにともなって倫理観や価値観、さらには人間性の意味や人間の定義までも大きく変化した物語」(p.484)

海外のSFが際立つ理由は、発達したテクノロジーのアイディア的なおもしろさ、独創性にではなく、人々の倫理観や価値観の変化まで、描いていることにあると僕は思う。

もちろん、人々の倫理観や価値観が大きく変化したからといって、ポストヒューマンが、私たちとあまりに大きくかけ離れすぎている、というわけではない。人類と社会が大きく変わっても、その世界にはどこかに変わらないもの、あるいは「現在の私たちにとって、変わってほしくないと願っているもの」が、ある。

本書における普遍的な価値観のひとつは、おそらく「愛」だ。愛を表現する方法は大きく変わってしまったけれど、誰かの愛を求めたり、誰かに愛を与えたりしようとして、人々の心が動き、そしてその人々の心の動きが、事件を、物語を、世界を動かしていく。

現在の社会/SFの世界というズレを描くと同時に、変わったもの/変わらないものというズレも描いている。まったく論理的な説明でなく恐縮だが、僕はこの2つのズレが刺激しあっているから、ポストヒューマンSFはおもしろいと思う。