【書評】インターネットで死ぬということ(イースト・プレス)

まず最初に……この本は社会学の本ではなかった。流行りの言い方を使うと「ライフ・ヒストリー」というカテゴリに分類されるらしい。自伝のような書き方で、作者が幼少期から現在に至るまでの人生を振り返っている。その際、当時の作者が置かれていた状況が、社会学の知見を用いて解釈されているのがこの本の特徴だ。

ふつう自伝というのは、誰にでもわかる平易な言葉を使って状況を記述しようとするものである。ところが、この本では、社会学の専門用語、概念、理論を使って、作者の置かれていた状況を規定する。

この本には、こうした手法を取っているがゆえに生じる難点がいくつかある。ここでは2点だけ指摘しておこう。

1.社会学の専門用語・概念・理論を適用できる状況なのか

たとえば、この本で紹介されている子供時代のシチュエーションに、ブルデューの「文化資本」の概念を適用して解釈することがはたして妥当なのか。少々専門的な話をすると、「界」の存在が明らかでないのに「文化資本」だけを使って状況を説明しようのは不適切な使い方である。

こうした社会学の諸概念の不適切な使用は、作者の不注意なり不勉強なりから生じているのか、それとも意図的なものなのか。いったいどちらだろうか。

2.社会学の概念で切れるような出来事しかこの本には出てこない可能性

自分としてはこちらの2のほうが深刻だと考える。この本の中では、作者が人生の中で行なった決定や取った戦略を説明するために、社会学の概念が頻出する。1ページにつき1つか2つ出てくることもある。ところが、自分の人生で起こった出来事のひとつひとつをすべて社会学の知識で切れるかというと、実際にはそんなことはない。

この本では、社会学の概念で切れそうな出来事ばかりが意図的に抽出されているのである。それはなぜかと問うのも、この本の読み方のひとつだ。

【評価】
★★☆☆☆

【こんな人にオススメ】
・「生きづらさ」を抱えている
・社会学に興味がある
・北条かやのファン、またはアンチ

【わたしのホンネ】
・1400円はちょっと高い